ニコラ・テスラの知られざる生涯

【テスラの父母】

 ニコラ・テスラの誕生日について正式な記録は残っていない。ただ、多くの証言から、1856年7月9日深夜〜10日未明にクロアチアのリーエカ地方のスミリャン村で生まれたことは確実である。寒村であるが、山紫水明の地であり環境は良い所である。
クロアチア リーエカ地方の山
 人は、生まれ育った場所による地場や地理風水などが脳の発達や性格にも影響を受ける。
例えば、峻厳な山々に囲まれた場所では頭がシャープであり、南国の暖かな場所では心のゆったりとした大らかな性格になるものである。
人だけではなく、動植物はその場所の特性を受けるものである。

 テスラの父、ミルティンはスミリャン村でセルビア正教会の司祭をしていた。教区民から信望もあったようである。教養があり、語学にも堪能で、セルビア・クロアチア語、ドイツ語、イタリア語などに通じていた。
後にテスラも数ヶ国語を話すようになるが、語学の才は父からの遺伝と言えるかもしれない。

 母のドゥーカは父とは反対に教育を受けておらず、読み書きはできなかった。ドゥーカの母が失明したことで、七人兄弟の長女であった幼い彼女は母親代わりを務めなければならなかったので、教育を受けることができなかったのだ。

しかし、聡明で芸術の才能や発明の才があり、家事の手間を省く便利な道具を多く発明して村人の暮らしに貢献した。テスラの発明の才は母親遺伝のようである。

 驚くべきはその記憶力で、聖書の一節を何千も暗唱したり、哲学の本を一冊丸暗記することもできたという。 

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クロアチア スミリャンムラのニコラ・テスラの生家 
 クロアチアのリーエカ地方スミリャン村にあるニコラ・テスラの生家。
生家前の広場にはテラス像が建てられている。
クロアチアの観光スポットにもなっている。



【テスラの兄弟】

 兄弟は、ミルカ、ダーネ(英語発音はダニエル)、アンゲリーナ、ニコラ(テスラのこと)、マリツァの5人で、二男三女の次男である。

 兄弟皆賢かったようである。中でも長兄のダーネはテスラよりも7歳年上で、テスラの子供の頃の記憶によれば、自分よりもはるかに優れていたと述懐している。

 長兄ダーネは幼少より驚くべき聡明さを発揮したという。また霊感があり、様々な予言をしたが、その中には、「生き残った兄弟は偉大さのさきがけとなる」というのがある。
図らずも、この予言は後年的中することになる。
 
 将来を期待されたダーネであるが、飼ってた馬に蹴られた怪我がもとで12歳で夭折してしまう。
 両親の落胆は大きく、その期待は次男・ニコラの肩に重くのしかかってくることになる。